呪い殺され前夜

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 一体は白いもやのような怨霊。「米米徳利」という名前だが、白い以外どこに米要素があるのかはわからない。物理攻撃は効かず、一見したところ最もダメージが少ない。他二体がどう対処するのか見所だ。  そして白い赤ん坊。「白坊」という名前の通りのかたちをした怨霊だ。赤ん坊とは思えない機敏な動きで、他の怨霊を圧倒する。攻撃力も決して低くはなく、鋭く尖った歯で獲物をバラバラにするまで噛みちぎり続ける。  最後に女。「礫蛇螺尼奴」などというこのなかで最も強そうな名前だが、首を絞めるしか攻撃手段を持たず、さらにはのろのろとした動きで一直線に獲物へ歩いていくため、なぜここまで生き残ったのかはわからない。悪運高いこの女が今後この二体の攻撃をどう凌いでいくか期待だ。  まず攻撃を仕掛けたのは白い赤ん坊だった。地面を蹴り、白いもやに飛びかかる。しかしさすがは物理攻撃無効といったところか、赤ん坊はそのままもやを通り抜け、反対の壁に激突してしまう。そして白いもやはゆらゆら揺られながら赤ん坊に近づくと、そのまま口鼻の辺りを覆ってしまった。これには無敵の攻撃力を誇る赤ん坊も堪らなかったのか、じたばたと苦しそうにもがいている。  しかし、この隙を女が見逃すはずもなかった。女はのろのろとした足取りで二体の元へ向かうと、そのまま赤ん坊の首を絞め始めた。数秒が経過し、赤ん坊の手足がだらりと垂れ下がる。女は赤ん坊から手を離すと、白いもやに攻撃は効かないと理解したのか、ふらりふらりと部屋の中を周回し始めた。  だが漁夫の利を図った女に腹が立ったのか、白いもやは女のほうへ漂うように移動すると、さきほど同様顔を覆ってしまった。これには女も手を伸ばして反撃するが、掴むことができない。次第に女の腕は下がっていき、数秒後、ばたりという音がして女が地面に転がった。  怨霊バトルロワイヤルを勝ち抜いたのは、白いもやこと「米米徳利」だった。やはり物理攻撃無効という特性が効いたようだ。そのとき、俺は空がぼんやり白んできていたことに気づいた。白いもやはふわふわと宙を彷徨うのみで、俺に攻撃してくる気配はない。
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