呪い殺され前夜

1/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 どうやら俺は明日のうちに死ぬらしい。原因は手元にある数体の呪いの人形だ。この人形たちは数週間を掛けて、会社を辞めた部下や取引先、裏社会の風格を纏った強面の男など、それぞれ別の人たちによって贈られてきたものだ。  それぞれが巧妙な手口で渡してくるため、職場で「鈍感のゴリラ」と不名誉なニックネームを付けられている俺は、ホラー作品なんかによく出てくるこちらを見た瞬間に全てを察してくれる坊主に教えてもらうまで、それらが呪いの人形であることに気づくことができなかった。自宅のラップ音や謎の人影らしきものに怯えて寺だか神社だかに逃げ込んだらこれである。  たしかに、人形たちをじっと眺めてみれば不気味に思えてくる。最初に受け取った人形はよくおままごとに使われていそうな八頭身の女性人形で、その黒髪はいまにも伸びてきそうだし、傷のような口からは笑い声が零れてきそうだ。  なかには取引先の女性からいただいた、場違いな子狐の可愛らしいぬいぐるみもある。腹に刺繍された「呪」の文字気づかなければ、女性からプレゼントを貰ったと今でも両手を挙げて喜んでいたことだろう。  俺は大企業の重役についていることもあり、会社の売り上げのためには汚い手段を取ることもあった。それに、家族を養っている社員をリストラすることもしばしばだ。その結果得たものがこの数体の呪いの人形たちである。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!