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 「クジ、おいで」  私は、読んでいた絵本を床に置いて、父親に近づいた。  「なぁに?」  「後ろを向いてごらん」  「?」  私は父に背中を向けた。すると、父は私の首に何かをかけた。  「これなに?」  「お土産」父は微笑む。「結構高かった」  「くれるの?」  「ああ」  「おお……」  首にかけられたのは、ネックレスだった。  手に取り眺めると、細いチェーンの先に、小指の爪ほどの大きさの宝石がついていた。綺麗なオレンジ色である。  私は、思わず微笑んでしまった。  嬉しかった。  ネックレスそのものより、普段あまり会えない父からのプレゼントであることに、私は価値を感じた。  「ありがとう、お父さん」  「うん」  「ねぇ、次はいつ帰ってくるの?」私が尋ねる。  「うーん、どうだろう。まぁ、一か月後ぐらいかなぁ」  「そっか」  父は私の頭を撫でると、体を引き寄せ、私を抱きしめた。  「お父さん?」  「私はお前を愛している。どれだけ離れていても、どれだけ時間が経っても、それは変わらない。絶対に……」  「はぁ」  父は私を解放すると、再び頭を撫で、優しく微笑んだ。  私は父が大好きだった。  尊敬していた。  憧れていた。  だから……、この一か月後、父が亡くなったと母に知らされたとき、私はその話を受け入れることができなかった。
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