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ヒッテルスバッハの流儀
かくしてパーティー当日、ランバートは朝から準備に追われた。客の把握は勿論だが、自分の女装の準備がある。
ちなみにチェルルはメイドの格好をして潜入するようで、ランバートと一緒に着替えていた。それをハムレットが見てしまい、珍しく石化していた。どうやら刺激が強かったらしい。
パーティーの一時間前、ランバートは全ての準備を整えて鏡の前にいるが、正直辟易としている。側ではシルヴィアが苦笑していた。
「あんた、本当に私にそっくりなのね」
「親子だろ」
「そうだけど。ちょっと怖いわ」
ランバートは今、重厚な青い清楚なドレスを纏い、髪の両サイドは編み込んで更にハーフアップにし、淡いピンクを基調としたメイクをしている。
派手すぎず落ち着いた淑女でありながらも若く愛らしさは保っている。
それを見るファウストは逆に男らしい黒で決めてきた。長い黒髪はそのまま自然に下ろし、メイクなどもしない。黒のスーツにドレスシャツというシンプルな装いにも関わらずこんなにも洗練されて見えるのは、彼の元々の品なのだろう。
「お前の女装はいつ見ても綺麗だな」
「ファウストも凄くかっこいいよ」
立ち上がり側に行くと、自然と腰に手が回る。そのままキスを強請りたくなるような目で見られて頬を染めたランバートに、すかさずシルヴィアが邪魔を入れた。
「はいはい、お仕事前に骨抜かないの。やるわよ、いいわね」
気合いの入るシルヴィアの声に、二人も真剣な顔で頷いた。
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