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『早々に我の復活に手を貸せ。さすれば残る2人の子は安寧となろう。
いや、それ以上だ。そなたがシュタイン王国をその手にすることが叶えば、2人は王家の一員ぞ。この先、戦いの矢面に立つ事もなかろう』
『そなたにもそなたの周りにいる者達もそなたが選択を誤らねば幸福が訪れるのだ。
早々に準備しろっ!夫をあの先の椅子に座らせ、両足首の内側を少し切るだけで事足りる。ただ、それだけだ。痛みもなければ苦しみない。夫は安らかな眠りにつくだけだ。さぁ、急ぐのだ。マルギット』
マルギットは己の胸の中から螺旋状に湧き出てきた黒い靄に包まれた。
反論する事も抗うこともできないもう一人のマルギットへ諦めた様に呟く。
「・・・・・夫を・・・・・
ハイノを差し出せばマデュラも2人の子も生き永らえる事ができるのですね?」
ポタリッ・・・・
ポタリッ・・・・
己で口にした言葉に胸が苦しく今にも張り裂けそうになる。
視界が歪みポタポタと落ちる涙が床に広がった。
『そうだ。安心致せ。夫だけの命で事足りるのだ。事を起こすには犠牲はつきものだ。
少ない犠牲で多くの利を得られるのだ。
できすぎた話だと思わぬか?
我にはできるのだ。
いや、そなたにはそれができるのだ。
さぁ、準備しろっ!
悠長にしている時はもはやないのだ。
我を復活させろっ!』
「・・・・ふぅ・・・・・
致し方ありませんね。
もはや、逃げれぬのでしょう?
ならば立ち向かうほかありません。
私はマデュラ子爵家当主ですから」
スッ!!!
マルギットは立ち上がると出入り口へ向かった。
床に置いた燭台を手に取ると開いた石壁からもと来た地下回廊を戻るのであった。
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