第13話 指輪の継承

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「ベルント、用意してくれ」 皆が部屋から出るとハイノがベルントへ指示を出した。 「かしこまりました」 ベルントはワゴンの上に用意されていた絹の布をめくった。 赤い台座に金細工が施された小さな箱が一つと緑の台座に金細工が施された箱が一つ姿を現した。 ベルントは一つを手に取るとハイノへ手渡した。 「マルギット、準備はできたぞ」 ハイノはマルギットへ合図を送る。 「感謝するわ、ハイノ」 マルギットはハイノに一言礼を言うと目を閉じ深く息を吸い姿勢を正した。 マルギットとハイノの姿を黙って見ていたアルノーとフレデリカへ視線を移す。 マルギットは静かに諭すように話しをはじめた。 「アルノー、フレデリカ。2人が王家星読みの縁で結ばれ、今、こうして仲睦まじくいられること父と母は本当に嬉しく思っています」 マルギットはハイノと一瞬、視線を交えた。 「母は、長らくそなたらの父に哀しい思いをさせてきたのです。 父の母への想いに気付かずに(うと)ましく思うことさえありました。 それでも、そんな母でも父は変わらず想ってくれていた。 始終、近くで見守り、優しく手を差し伸べ、寄り添い、愛してくれました。 アルノ―が生まれる頃にやっと母は父のその想いに気付くことができたのです。 今では父が母を支えてくれているからこそ生きていけると思っています。 アルノ―、フレデリカ、そなたらは今のまま、いえ、今以上に仲睦まじくあって下さいね。父と母の分まで仲睦まじくあって下さい」 ガタンッ ハイノは目を潤ませ話しを続けるマルギットへ歩み寄ると優しく肩を抱いた。 マルギットはハイノの胸に頭を寄せる。 ハイノを見上る。 「感謝するわ、ハイノ」 ハイノにまた一つ礼を言うとハイノの掌に乗る赤い台座に金細工が施された箱を手に取った。 箱を開き机の上に置いた。
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