10人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、寮に走って行った。
「真弓さん!あのお酢と玉子ちょうだい!」
そう言って譲ってもらい家に持ち帰った。
じゃがいもの皮を剥きサイコロ状に切り隠し味を入れ火にかけた。茹でている間にきゅうりと玉ねぎを刻み、これでもか位絞る。ベーコンを少し焦げ目が付く位まで炒める。ここまでは今迄試行錯誤してやっていた事。
ここからだ……。
ボールに朝産まれたばかりの玉子の黄身だけを入れる。そしてあのお酢を少しづつ加えながら混ぜて行く。
少しづつ少しづつ……手が痛くなって来た。
混ぜながらお母さんの事を思った。お父さんが苦労して作ったじゃがいもを美味しく料理をしたい。そう思いながら取り寄せたお酢と新鮮な玉子で、こんなに手が痛くなっても自分でマヨネーズを作って……涙が出て来た。
夫婦になった理由なんてどうでも良かった。お母さんがお父さんを想う気持ちがわかった。
そして夕べ出来るわけがないと思いながら返事をしたお父さんの気持ちがわかる気がした。
マヨネーズが出来た!材料を混ぜて行く。 丁寧に丁寧に気持ちを込めて。
恐る恐る口に運んだ。
出来た……。
涙が止まらない……。
最初のコメントを投稿しよう!