1.水を求めて

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 「見たいでしょ?」  「!???!!」  ふと気がつくと、鼻が着くほどの至近距離に顔。余りに突然の出来事に、口に含んでいたコーヒーを盛大に吹いてしまった。  まずいと思い少女を見るが、全く臆せず、うす紅色の頬に着いた褐色の液体を、拭き取る素振りすらない。  先程まで一切こちらに構うことなく話をしていた少女が、灰色の真っ直ぐな眼差しを向け、問い続ける。  「夢、見たいんでしょ?」  夢という単語に、不意に思考が止まる。  少女はふわりと立ち上がった。遅れてほのかに甘く、そして柔らかい香りが鼻をくすぐった。  掌にこれまた柔らかな感覚。一呼吸置いて、手を握られていることに気がつく。  そして一気に引っ張られた。少し痛い。  見上げると、少女が不服そうにこちらを見つめる。  「見たくないの?」  少女の可愛らしい顔を正面から見つめて、初めて気がついた。  この娘は、喋る時に口が開いていない―  いよいよ頭がパンクしかけて、目を逸らした。  夢…は見たい。その為にずっと寝ては起きてを繰り返してきた。  けれども何も見れないまま、目が覚めるだけ。神様はいつしか、寝ているときでさえ、夢を見ることを許してくれなくなった。
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