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帰り道(第二話『わんことおそろい』1)
昼下がりの休日。俺は朝倉と歩いている。あたたかくて、春らしい天気だ。
「おそろいだね」
「よかったな」
さっきまで俺たちは買い物をしていた。いまは家に帰る途中だ。
手をつないでいる男女とすれ違った。俺は目で追った。あのふたりも恋人同士なんだ。
「手、つなぐか?」
朝倉が声をかけてきた。
「いい。友だちに見られたら、言い訳が大変だよ」
朝倉は息を吐いた。ため息なのかもしれない。悪いことをしたかな。せっかく言ってくれたのに。俺だって、本当は……。
「外でいちゃつかなくてもいいもんな、俺たち。いっしょに住んでるんだし」
「そうそう」
なんて言いつつ、俺は体の片側を朝倉にくっつけた。お互い、相手から遠いほうの手で紙袋を持っている。朝倉は笑っている。
「ほら。つなぎたいんだろ?」
「ううん、いい。歩きにくい?」
「いや。うれしい」
家に着いた。玄関を開けて部屋に入る。靴を脱ごうとしたら、抱き寄せられた。
「朝倉?」
いきなりキスされた。
「ん、ん」
冷えていた唇が熱くなる。
もっと深くくちづけしたい。もう、誰の目も気にしなくていいんだから。俺は朝倉の背中に両腕をまわした。慌てていたから、紙袋を落とした。
「あ……」
「橋本。こっち見て」
「うん、ん」
朝倉が俺の髪を梳く。朝倉はしょっちゅう俺の髪を撫でている。さらさらしていて指に馴染むから、気に入っているらしい。朝倉も紙袋を落としてしまった。俺の頭を抱いて、反対の手で胸のあたりを撫でてくれた。そして、鎖骨、肩甲骨、背筋、腰と手のひらを滑らせる。
ゆうべの行為を思い出した。ふれられたところが熱を帯びたように痺れてくる。朝倉に体を撫でられると、大切にされているんだって実感する。
朝倉は俺の下腹部をさすった。苦笑いを浮かべている。
「ここ、まだ痛いか?」
「三回やったこと反省してるんだ?」
「あれだけ泣かせたら、罪悪感が募るよ」
「平気だよ」
「無理してないか?」
「うん。しよ、朝倉。今日も」
俺たちは靴を脱ぐと、部屋の奥にある布団の上に転がった。
「布団敷きっぱなしで正解だったなあ」
「押し入れにしまうのが面倒なだけだったんだけどね」
昨日はいっぱい抱き合って、遅い時間に寝た。だから、ふたりそろって寝坊した。急いで支度して、外出したのだ。
俺は朝倉の上に乗っかった。両手を彼の顔の両側につく。抱え込むように朝倉の頬にふれた。ゆっくりキスを繰り返す。朝倉はキスに応えながら、俺のシャツをめくる。
もっと、さわってほしい。
俺は自分でシャツのボタンを外して、胸元を開いた。朝倉が俺の胸の突起を指先で転がす。
「はあ。ん、ん」
声が漏らしながら、俺は朝倉が着ているカットソーの下に手を入れる。
「ん、おかえし」
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