6419人が本棚に入れています
本棚に追加
/462ページ
「だから、今の澪さんの目標は『男性恐怖症を克服して、お父さんとバージンロードを歩くこと』なんだと思いますよ」
「そんな……澪が……そんなことを……。それが本当なら……そんな嬉しいことはないわ」
澪の母が目を潤ませているのを見て、俺は今自分の考えていることを隠さず伝えた。
「澪さんは1週間ほど右肩を固定する必要があるみたいなんです」
「そう……日常生活に多少支障があるわね」
「それで、澪さんの返事次第ですが、僕が澪さんのお世話をしてもいいでしょうか?」
「いいけど、久我さんお仕事大丈夫なの?」
「はい。年内の仕事は昨日で大きなものは片付いたので」
「そう」
「それと、もう一つお願いがあります。澪さんが学生なので遠慮していたのですが……澪さんの肩が治るまで一緒に過ごして、その生活で澪さんに負担がかからないようでしたら、引き続き『同棲』をお許しいただけないでしょうか。僕との交際をもう少し安定させたいんです」
すると母は目をぱちくりさせた。
「え、同棲?」
「はい。仕事をこなしながら、もう少し澪さんと安定的に会えるようにしたい、という僕の我が儘ではあるのですが」
「澪は何て?」
「澪さんにはまだ伝えていません」
「そう。『テスト期間中は大学に久我さんの家から通うことにしたの』って嬉しそうに話してたくらいだし、澪がそうしたいなら同棲してもいいわよ。ただし――」
澪の母は久我をジッと見つめて告げる。
「条件があるわ。試しに澪の肩が落ち着くまで一緒に過ごして、その後については年始、うちの主人に挨拶に来てもらえないかしら。澪が付き合っている人の事、気にしているみたいなの」
久我はニッコリと笑う。
「もちろんです。僕もそうしたいと思っていました」
「そういうことね。わかったわ。主人に話しておく」
「よろしくお願いします」
最初のコメントを投稿しよう!