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「病院でさ、詩歌は俺に触れられなかっただろ?
あのとき、両親の事があって、やっぱり俺を受け入れるのは難しいのかもと思った」
「そんなつもりじゃなかったの。あれは誤解でっ…わたしは……」
「ーーーーうん、わかってる。
わかっているっていうか、最近わかったっていうか……公平さんが色々教えてくれてね。
だから、詩歌の気持ちはちゃんと理解できてる。
今までの話をするとね、両親が亡くなった次の日、長沼から連絡を貰ったんだ」
「え? 連絡先……」
「詩歌の携帯からかけてきたんだよ。それで会って話をした」
「そう、だったの……? 徳ちゃん何にも教えてくれなかったから……」
「長沼は、詩歌は会いたくないと言ってるから別れてくれと言ってきた」
「うそだよ……わたしそんなこと……」
「俺もそんな筈はないと伝えたよ。直接、詩歌と話すから会わせてくれって言った。でも、会わせて貰えなかった。
立場的に強く出れなかったんだ。
俺を拒否したときの詩歌の顔も忘れられなかったし、その後に、長沼にしがみついて泣いていたのも、会いたくないの信憑性を高めるのに一役かってた。
両親が死んだのは、お前達のせいだと責められるのは結構堪えて、詩歌も同じ気持ちなんだろうなとそのときは思ったんだ。
それまでも、責任は重々感じていたけれど、あの時は、今までの比じゃなかった」
沖島さんは辛そうな顔になり、目を伏せた。
「俺は詩歌と付き合うのに罪悪感がゼロだった訳じゃない。申し訳ない気持ちが常にあった。
本当に俺でいいのか? って、自分に自信がもてなかった。
長沼はその気持ちを見抜いて指摘してきた。
『弱っている子につけこんで満足か、詩歌は恋愛感情を勘違いしているだけだ。本当は好きなんかじゃない』
それを……気づかせてやってくれと言われた」
「勘違いなんかじゃないです……」
必死に首を振って否定したら、沖島さんは目尻を垂らした。
「もともと、全く関わり合いのない世界に居たわけだし、目を覚ますチャンスをくれっていうのが長沼の要求で、詩歌がまだ俺を好きなら、詩歌のほうから連絡させるって話だった。
そんな条件、納得出来なかったし、距離を置くにしても別れるにしても、1度会って話し合うべきだと思った。
でも、電話も繋がらなくなって、これは本格的に嫌われたかなと思ったよ」
「電話が繋がらないってなに?」
「かけられなくなった」
「ーーなんで?」
「詩歌が拒否設定にしたからだろ」
「してないよ……わたし、そんなことしてないっ」
「……長沼かな……」
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