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チームの溜まり場と言われるところに来た。
広い敷地に建物が2つもあって、以前、いつも遊びに行っていたビルとは違い、たくさんの人がいて、ものすごい数のバイクが並んでいた。
わたしは、敷地内のプレハブのような建物に入れてもらい、奥にある個室に入ってパイプベッドに腰かけた。
仮眠部屋だと教えて貰った。
「なんで手袋してないんだよ」
素手でバイクに乗ってしまい、手は感覚が無くなっていた。凍りついた手に沖島さんは息を吹き掛けて、両手で包んだ。
「バイクに乗る予定はなかったので……」
「乗らなくても手袋は必要だろ。こんなに寒いのに何言ってんだよ」
小言を言われ、わたしは口を尖らせた。
「トールは怒ってばっかり」
「あ? いや、あーー…そうか……?」
「やっと会えたんですよ。
急に会えなくなって、わたしはもうトールには嫌われてしまったんだと思って……それで、忘れなくちゃって、ずっと……」
また溢れてしまった涙を、ごめんと言って拭ってくれる。
「そうだな……その辺の話をしようか……」
沖島さんに抱き締められると、ふわっと香水とタバコの匂いがした。
少しだけ、緊張した。
あのときのように、反射的に突き飛ばしてしまわないかと、不安になった。
「大丈夫……?」
「うん」
ちゃんと腕のなかにいれる自分に安堵する。
沖島さんも同じ思いだったらしく、ほぅと息をついた。
そして、互いにやっと笑顔になる。
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