18

1/8
399人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ

18

**** チームの溜まり場と言われるところに来た。 広い敷地に建物が2つもあって、以前、いつも遊びに行っていたビルとは違い、たくさんの人がいて、ものすごい数のバイクが並んでいた。 わたしは、敷地内のプレハブのような建物に入れてもらい、奥にある個室に入ってパイプベッドに腰かけた。 仮眠部屋だと教えて貰った。 「なんで手袋してないんだよ」 素手でバイクに乗ってしまい、手は感覚が無くなっていた。凍りついた手に沖島さんは息を吹き掛けて、両手で包んだ。 「バイクに乗る予定はなかったので……」 「乗らなくても手袋は必要だろ。こんなに寒いのに何言ってんだよ」 小言を言われ、わたしは口を尖らせた。 「トールは怒ってばっかり」 「あ? いや、あーー…そうか……?」 「やっと会えたんですよ。 急に会えなくなって、わたしはもうトールには嫌われてしまったんだと思って……それで、忘れなくちゃって、ずっと……」 また溢れてしまった涙を、ごめんと言って拭ってくれる。 「そうだな……その辺の話をしようか……」 沖島さんに抱き締められると、ふわっと香水とタバコの匂いがした。 少しだけ、緊張した。 あのときのように、反射的に突き飛ばしてしまわないかと、不安になった。 「大丈夫……?」 「うん」 ちゃんと腕のなかにいれる自分に安堵する。 沖島さんも同じ思いだったらしく、ほぅと息をついた。 そして、互いにやっと笑顔になる。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!