甘い香りに誘われて

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 気がついた時には、もうすでに遅かった。  一つ一つ丁寧に創り出した小さな粒たちが消えていた。棚から落ちてしまったのか、他の商品に紛れてしまったのか、慌てて周囲を探し回ったが店内には何の痕跡もない。  ちょうど居合わせた数人の客の顔が不安そうにこちらを向いている。 「……やられた」  店主は小さく呟いた。  僅かに傾いた太陽の光を受けて、空白の棚が現実を突きつけていた。
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