思い出した、前世

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思い出した、前世

──私が名前を呼ぶと、名前の通り優しく微笑んでくれる。そんな、優くんは、私の王子様で私だけの王子様だと思ってた。  「……でも、違うんだ」 私は、ベッドの上でぎゅっと、手を握りしめた。楽しみにしていた高校入学の日、私は思い出した。私は、所謂──ライバルキャラだと言うことを。  突然だけど、私には前世というものがある、らしい。さっき、夢で見たから、多分本当。でも、話したいのは、そこじゃない。この世界が、前世ではまっていた、少女漫画にそっくりだということだ。  はまっていた少女漫画なのに、タイトルがさっぱり思い出せないけれど、そっくりなのは間違いない。なぜなら、少なくとも二人、私の知っている名前と登場人物の名前が一致するからだ。  一人は、この漫画のヒーロー、小鳥遊優。私の義兄で、見た目がよくて、スポーツ万能。もちろん、女子に人気があるけれど、それを決して鼻にかけない、優しい人。  ──そして、もう一人は、この漫画のライバルキャラ。小鳥遊朱里。  小鳥遊優と小鳥遊朱里は両親の再婚により、義兄妹となる。小鳥遊朱里は、初めての顔合わせの日に、小鳥遊優に一目惚れ。それ以来彼のことを、優くん、と呼び、義妹という立場を利用して彼を縛るようになる。  ……そして、私の名前が、小鳥遊朱里だったりする。  私、こと小鳥遊朱里は、恋に落ちたヒロインとヒーローの前に立ち塞がるライバルキャラだったのだ。
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