テリトリー

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待ち合わせ場所に三人がつくと、長身に綺麗にまとわれた服装の焦げ茶色の髪の毛。すぐに和夫がそこにいる事に壱は気づいた。 そうが連絡するねーと言って携帯を取り出したが、そこにいるとは言わずに連絡されるのを待っていたが、そうの連絡を待たずに和夫も三人の方へと向かって歩いてきた。 「壱。」 きれいな優しい声に呼ばれた壱はそちらから来ていることを分かっていたのに、あぁ。と驚いたふりをした。 「和夫君!さっきぶりー」 「お誘いありがとうごさまいます。にしても。」 和夫は、壱、そう、来人の顔をじっと見つめた。 「美形揃い過ぎてすぐわかりましたよ。」 「えへへーありがとう。ほーら、らいちゃんちゃんと自己紹介しようねぇ。」 ぽんとそうが来人の背中を押すと、ぎろりと和夫を睨み来人は普段より大きい声をだした。 「壱と一緒に住んでる来人言います!」 来人の言葉にキョトンとした顔を一瞬見せた和夫だが、すぐににこりと優しい笑顔と、右手を差し出した。 「はじめまして。壱の同級生の和夫です。よろしゅう。」 差し出された右手に不本意そうに、指先だけを合わせた来人の手をぐっと握った和夫。 二人の顔を見て満足そうに笑うそうを不思議に思いながらも壱は目的地の方へと歩き出した。 「壱。」 すぐに壱の動きに反応し手を話し後ろをついてきた来人の呼び声に壱は自分より高い来人の顔をみる。 少し膨れた顔で、自分を見る来人にキョトンとした顔を送る。 「置いてくなし。」 「すぐついてきたじゃんか。」 壱はにへらっと笑い、来人の頭をくしゃりとなでた。 その後ろで面白くなさそうな顔を一瞬した和夫をそうは見逃さず、和夫のお尻をぽんと叩く。 「うわっ」 「いっちーは案外人気あるよ?」 「そーやと思います。」 たまにチラチラと後ろのそうと和夫の様子を見る壱に、にこりと和夫が笑顔を向けた。 さっと前を向いた壱の顔がすこし赤らんでるように和夫の目には写っていた。 「まぁ、壱のタイプは自分らしーんでがんばりますよ。」 「応援はするけど、僕はらいちゃんの事も応援してるから手助けはしないよー!」 「あはは。それは残念や。」 1軒のセレクトショップに4人は入り、元気のいい歓迎の声を聞き流し、壱はハンガーにかかったトップスを見た。 黒いVネックの薄いニットの値札を確認する。 これでいいかと、とりあえずおいておきオーナーの誕生日に来ていく服も自分で買うかと、店内を物色する。 オーナーの誕生日会と言ってもオーナーの同業者が多く集まり、最初はホテルでの会食から始まり、去年はキャバクラにも連れて行かれていた。 本来なら行かなくていいとは思う。従業員の若い子が誰も行かないと流石に格好がつかないからとは空いていたのが壱だけだった為、啓治に連れられて行ったのだ。 今年も啓治に誘われた壱は、慕っている啓治の頼みなのはもちろん隼人も来るしと承諾した。 ホテルでの食事になんて服もちろん壱は持っていなく、昨年啓治が買ってくれたジャケットを今年も着ることになるのだが昨年合わせた黒いスキニーパンツは、誕生日会の数日後に尽くそうに嘔吐物を吐かれ捨てていた。 ジーパンもダメージパンツも履いていくわけには行かないだろうと、黒いパンツを手に取った。 それにインナーも買うかと、再度トップスを見ると後ろから来人が、黒のタートルネックを差し出してきた。 「あいつの誕生日会だろ?」 「そう。よく分かったな。」 「黒のパンツに黒は重いんやない?白のがいいやろ。」 和夫の言葉に来人は和夫をジロリと睨んだ。 「壱は黒のが似合うし。」 「や、白のがええやろ。」 言い合いをする和夫と来人の二人を他人のフリをしようとと壱はそそくさと二人から離れようとしたら、バッと二人に両手を掴まれた。 「「どっち」や」 二人から見つめられた壱はたじろい、そうを探す。 見つけたそうは呑気に従業員と話をしてこちらに気づいていなかった。 「あー、うん。個人的には黒...?」 「ほらな!言ったろ。」 ドヤっと和夫を見た来人に、壱は申し訳なさそうに言葉を続ける。 「ただ、ジャケットも黒だから...」 この言葉にしょぼんとした来人に次は和夫がにやりと笑った。 「黒に黒は重いやんなぁ?」 得意げに笑った和夫としょんぼりとした来人どちらにも申し訳ないがと、壱は1枚のタートルネックを手に取った。 「だから、グレーにしとくわ。」 ぽかんと、同じような表情を見せた2人を笑いそうになったが笑いをこらえそうの方へと壱は向かった。 置き去りにされた和夫と来人は目を見合わせしばらく沈黙していた。 「今回は痛み分けやな。」 ははっと笑った和夫に、来人は面白くなさそうに舌打ちをした。
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