再会

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事務所から歩いて10分もかからないよく行く焼肉店に向かうと丁度男女二人が店から出てきた。 店内に入ると誰もいなく、いらっしゃいませー!と大きな声で店長が出迎えてくれた。 「おー二人ともおつかれさん。」 「お疲れ様です店長。」 店長は、啓治と同級生で熊みたいというのがとても似合っている愛嬌がある人で、壱はとてもなついていて、店長の顔を見るなり壱は嬉しそうに笑った。 「そうくんも久しぶりだねぇ。」 席に案内され、お絞りを差し出される。 「うん!太るからあんまり来れなくてごめんねぇ。お肉ほんとすぐお腹についちゃう。」 「違うだろ。そうの場合米食うから。」 「えぇ。焼肉にはお米でしょっ!」 「わかるわ。おじちゃんも焼肉には白飯だなぁ。」 「ねー!ほら2対1でいっちーの負けー! とりあえずカルビと白米と黒ウーロンハイ!いっちーは?」 「ハイボールと塩たん」 「はいよ。」 靴を脱ぎ脚を抱えながら、そうは携帯を取りだしカシャリと壱を撮った。 「なに。」 「SNS用ー」 「肉来てから普通撮らねぇ?」 「あ、そっか。これじゃ焼肉来ました感無いか。」 そんなことを言いながら自撮りを続けるそうを気にせず、何度も見ているメニューをパラパラとめくる。 お待たせ。とハイボールと黒ウーロンハイが届き、乾杯しようとするとまた動画を取るそうにふとした疑問をあげる。 「てか、SNSそんな顔出ししてたら妹にバレねーの?」 「大丈夫。鍵垢だし、トプはかおだしてないよん。」 両親が借金で蒸発し、高校生の妹と二人で暮らすそうは仕事もゲイであることも妹には隠していた。 「てかてか、いっちー2輪差ししたことある?」 「何急に」 「今日3人でやられたって聞いたでしょ?おちんちん2本つっこまれたんだけど、慣らしてなかったから盛大に切れて血めっちゃでたけど、慣らしてたら気持ちかったような気がして...」 真剣な顔で話すそうの顔を見て壱はふっと、笑った。 「あるわけないし、そんなんしてっとうんこ漏れっぱなしでその年でオムツ生活なっぞ。」 「そうかなぁ。」 「そ。それより、ホルモン食べてぇから、なんか選んで」 「んー。ココロかなぁ」 「店長。ココロとレバー!」 はーい!と厨房からの返事と共に、扉がガラリと開き4人の男女が入ってきた。 その中にいる焦げた茶色の長身の男に壱は見覚えがあったが思い出せずにいた。 店長に案内され奥に進むため二人の横を通ろうとしたとき、先頭をあるいていた女があーっと声を上げた。 「八百じゃん。びっくりした。」 びっくりしたのはこちらの方だ。と思いながらも壱は女をみて、頭にはてなマークを浮かべた。 後ろからふわふわなカールをかけた女と黒髪の短髪の男が。 唯一見覚えのあった長身の男が俺を見ておぉ。っと口を開いた。 「コッペイチ君やん。久しぶりやなぁ」 その言葉に、その見覚えに確信が芽生えた壱の苦虫を噛み潰すような表情にそうが気づき口を開いた。 「いっちーのお友達?」 「え。あぁ。同級生。たしか。」 「あっはな、確かってひどいなぁ。隣の席やったやん。」 コッペイチ君と自分を呼ぶ男はすぐに和夫とわかったが、周りの三人が全く思い出せない壱は黙ったままいた。 「えへへ。いっちーらしいね!人の顔覚えられないの!」 「てか何この可愛い子!顔ちっちゃい!目おっきい!!羨ましい!」 「ほんとー!肌白いし、きれぇ。」 女性二人がそうの容姿を褒めちぎり壱への興味がそれてほっとしていると、和夫は壱の耳元に顔をやった。 「壱の彼氏?ってか彼女?」 「は?」 「いや、可愛い子やから。」 「男だぞ」 「せやな。けど...まぁええや。連絡先教えてや。」 「は?なんで。」 「ええやろ。高校のときから仲良ーしたかったんに結局高校やめてしもたから連絡先分からずじまいやったやないか。」 「普通に嫌。」 「そーいわんと。」 しつこい和夫に壱が舌打ちをした音に被り黒髪の男が和夫早くいこーぜ。と歩きだす。 「あー。ほいこれ。」 和夫は携帯本体をそのまま壱達のテーブルにおき、奥の席についた。 置き去りにされた携帯をどうすればいいのか戸惑う壱の顔を見て、そうはひょいと置かれた携帯を持ち上げた。 「うわ。あの人パスワードつけてないよ。危なーい。 てか、すご。めっちゃ頭いいじゃん。すっごい大学!優良物件だよー?」 「しらねぇよ。はよ食って出たい。」 「はーい!」 やっと届いた肉を焼き、後ろから聞こえる会話に嫌気が差していた。 机の橋に置かれた和夫の携帯をどうするべきなのかと悩みながらも言葉数も少なく、肉を食べ終わる。 「携帯代わりにかえしにいってこよっか?」 そうからの気遣いの言葉にこくりと頭を下げる。 ぱたぱたと4人のもとへいくそうを横目に店長に会計をお願いした。 「壱君今日はあんまり食欲なかった?」 「あー、うん。ちょっとこの後飲み行くから食べ過ぎたら吐いちまう。」 苦笑いを浮かべた壱に飲みすぎないように。と店長がウコンを2本渡す。 「え。ありがとう。」 「えー!店長ありがとー!」 いつの間にか戻ってきていたそうが壱の後ろからひょっこりと顔を出しお礼を告げた。 「またね。二人とも。」 「「ごちそうさまでした。」」 外に出て煙草に火をつける。 そうは、貰ったウコンを飲み干しその瓶をポケットに閉まった。 「うよーし!いっちー明日休みでしょ?こうなったら飲も!」 自分のテンションの低さに気を使ってくれたんであろう、そうの言葉にコクリと頷いた壱の後ろの扉がガラリと開いた。 「壱。」 ふわりと焼肉の匂いと和夫の香水の匂いが広がる。 「うわ。びびった。」 「今度同窓会あるからきーや!」 「行くわけねぇだろ。」 スタスタと歩き出す壱の後を和夫に手を振りそうは追いかけた。
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