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テリトリー
「うわ!壱がおしゃれピンク着てる!」
寮にかえるなり、赤茶色のアシメントリーな長髪で壱より目線が高い同居人、来人に笑われた。
和夫に借りた服は、薄ピンクの薄いニットで壱は自分でも似合わないことは分かっていた。
「そうにゲロ吐かれたんだよ。」
「何回目だよ。」
バカにした笑いをおくり来人は壱の帰宅により止めていたゲームを再開した。
壱は荷物をおき、来人のタバコに手を伸ばす。
「壱がタバコ切らしてるとかめずらし。」
「この格好でコンビニ寄れるかよ」
「気にしすぎ」
「てか、来人仕事は?」
「あー、ダルくて休んだ」
「また仮病かよ。」
「病気よ?風呂に3日はいってねーもん。」
「汚っ。」
ほれ、と頭を向ける来人に後ずさりする壱。
「誰にもあわねんだからよくない?」
「俺に会うだろが。」
「壱そうそうここに居ないし。こんの不良息子が!」
「てめぇの息子になった覚えねーよ」
来人と壱は同い年で、ほぼ同時期に店に入店した同期であった。
来人は、普段から休みがちで半月も出勤すればいいところ。そんなに物欲がないのかそれでも生活に困らないらしく常にテレビの前の住人と化していた。
タバコの火を消し、風呂場に向かいお湯を張る。
薄ピンクのニットを脱げば、かすかに香る柔軟剤の匂いに壱は顔をしかめた。
ニットをネットに入れて、自分のパンツと洗っていいものかと悩み、男二人の部屋に洗濯物を入れるかごなんてものはなくそのまま床に置く。スキニーパンツと靴下、パンツはそのまま洗濯機の中に放り込んだ。
まだ全然溜まっていない浴槽にはいり、ぼーっと天井を眺める。
服を返すためにまた和夫と会わなければならない。ということは服を借りた時から分かっていたのになぜ自分は借りてしまったのか。
そして、返すために会うことに対して面倒くさい気持ちと少し楽しみな気持ちが入り乱れている自分の心に少し戸惑いさえ感じていた。
きっとこれは、久しぶりに自分が売春していることを知らない人と出会ったからなんだ。と言い聞かせた。
「しょーもな。」
ポツリとただ独り言をつぶやいた気でいた壱の言葉にレスポンスはすぐに来た。
「壱はいつもしょーもないことで悩むよな!」
レスポンスは、リビングにいたはずの来人からで、惜しげもなく鍛えられた綺麗な体を丸裸にし風呂場の入り口を開けていた。
「なに。」
じろりと来人を睨んだ壱に、来人は臆することもなく風呂場にはいり、シャワーを出す。
緩くなった風呂場のお湯の勢いにまた壱は腹を立て、舌打ちをした。
「お下品ねぇ、壱くんは。」
「お湯たまんねーだろ。」
「ふはっ、なら溜めてから入れよ。」
シャワーを頭から被る来人は雪国の田舎生まれできれいな白い肌をしている。ただ背中には、大きなやけどの跡。
高校の頃にゲイだと親にバレたときに動揺した母親がストーブにぶつかりやかんが倒れそうになった所を来人がかばったために残った跡だった。
もちろん田舎ではそんな来人は生きづらく親にも理解をしてもらえず高校を卒業し、こちらに来てからは一度も連絡を取っていないという。
背筋にやけどの跡は、なんか戦士みたいで気に入っている。と来人が言っていたことを思い出した。
「なー、なんで引きこもりなのにそんな筋肉痛つくの。」
「一応筋トレはしてっぞ。やっぱ細マッチョのが売れるからな。」
筋肉を浮かせて言った来人に壱は自分の二の腕を掴みため息を吐く。
「筋トレしてもつかないんだけど」
「体質だろ。それに、壱はまず肉つけないと。」
「んー太らん。」
「ってか、そんなリスカだらけのマッチョとかキモいからやめとけ。そんなことより、洗って。」
コテンと頭を後に倒した来人の言葉に、壱は浴槽から立ち上がり来人の後に膝をついた。
赤茶色の髪でシャンプーを泡立てようとするが、3日も入っていないとちょっとやそっとで泡立たずシャンプーを追加する。
面倒くさがりな来人は、放っておけばきっとご飯もサラミかじってるだけで、お風呂だって外に出るまで入らない。
実際出会ったときは、仕事でしかシャワーを浴びずコンディショナーやトリートメントというものを知らないのかと思うレベルでガシガシの髪の毛に、何年も洗濯してないズボン、Tシャツとパンツは毎日コンビニで買って捨てていた。
流石に生活力のなさに家事の一切を壱が請け負う変わりに寮の家賃は来人が払ってくれている。
一緒に住んでいる限り、臭い体でいられるくらいなら洗ってやると一度無理やり風呂場に連れ込んだらそこから壱が風呂に入るときに自分から入ってくるようになったのだ。
「シャンプー長くねぇ」
「お前がずっと洗ってなかったせいだろ。」
「壱が帰ってこないからじゃん。」
昨日は和夫の家に、一昨日は面倒くさくなり店に泊まり、その前も仕事なのに飲みに行き深酒してしまい起きれなかったらと思い店に泊まっていた。
ぷくぅと頬を膨らませる来人の頬を押して空気を出させる。
「ほい、流すからシャワーとって。」
「へいへい。」
シャワーをながしおえ、コンディショナーをつけ、背中洗う。
ぼけーっと何もせずにただ座っている来人にボディスポンジを手渡す。
「下半身は自分で洗えよ。」
「えー、めんどい。」
「どんだけだよ。ならこっち向け。」
「ほーい!」
くるりと、壱のほうへ身体を向ける来人の足を持ち上げ丁寧に指の間を洗う。
足先から太ももの方へと向かうと来人のソレは熱を持ち勃ち上がろうとしていた。
「なんで勃ってんだよ。」
「3日ヌいてねーから?」
出しっぱなしのシャワーを頭からかぶりながら来人はヒヒッと笑って壱の手を自分のモノに誘導した。
「ぬーいてー。」
「金とんぞ。」
「いやん。」
来人に抜けと言われたのは初めてではない壱はとりあえず自分も早く湯船に浸かりたいと、ボディソープを足す。
クチャクチャと上下に擦れば、すぐにソレは更に硬くなり天を仰ぐ。
先にもう片方の手のひらをそえて円を書くようにまわすと来人の身体はビクンッと震えた。
「それほんとすき。」
「知ってる。」
「射精してる感じする。」
ちらりと来人の方を見ると、シャワーのお湯に濡れた薄紅に火照る整った顔が壱を見ていた。
「なに。」
「可愛いなぁって思って。」
「可愛いい言われても嬉しくねーって。」
「あ、そこきもち。」
くちゃくちゃとカリを引っ掻くように擦ると、来人は目を閉じ息を洩らした。
身体が冷えた壱は早く終わらせようとライトに体を寄せ、乳首をチロリと舐めた。
「ん...」
来人の素直に漏れる反応に、壱は乳首に舌を這わせコリコリと執拗に刺激を続ける。
刺激に答えるように吐息を漏らす来人の手が壱の首に添えられそのままぐっと持ち上げられた。
「ふっ!んっ..」
突然塞がれた壱の唾液で濡れた唇から来人の舌が侵入しちゅくちゅくと、舌と歯茎をなぞられ息を漏らすが壱はされるがままに口を許し、手を上下に動かすと、びくりとソレは膨張し白い液が壱の手を汚す。
「っはっ...」
「っ...ふぅ。ほい。湯冷めすっからお湯浸かって。」
シャワーで綺麗に来人のモノを流す壱の言葉に来人は素直に頷き、いつの間にかお湯が溢れていた浴槽に入りお湯を止めた。
「ほんと、壱いなきゃ俺死んでるなー。」
「そうだろな。」
「老後まで面倒見てもらお。」
「んー。」
壱は、ペラペラと喋る来人に空返事をしながら自分の髪を少しだけ反応した自分のモノがおさまるまで洗っていた。
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