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お風呂からあがり、来人の髪を乾かしているとピンポンとインターホンが来客を知らせた。
その音はオートロックの音ではなく、家の厳寒の音だったため、従業員の誰かだろうと思いパンツは1枚で壱は玄関へと向った。
ガチャリと玄関を開くとそこに居たのはそうだった。
「パンイチで玄関開けるとか、もしこれがアメリカのナイスゲイだったらヤラれてるよー。」
「ナイスゲイってなに。」
「ま、いいや!服!買いに行こ!」
「あー、髪乾かしてからな。」
そうを家に招き入れ、ソファに座り来人の髪を乾かすのを再開する。
「そうさんお疲れーっす。」
「らいちゃん今日仕事じゃなかったの?」
「休みました。」
「本当、安定だねぇ。今はなんのゲームハマってんのー?」
「普通のRPGっすね。」
「へー。僕ゲームチュートリアルもクリアできないからそんけー。」
「そうさんはまた壱とデートっすか。」
「そ。またゲロ受け止めてもらっちゃったから服買いにねぇ」
「何回目なんすか。」
「もう数え切れないよ...」
二人の談笑を聞き流し、自分の髪を乾かし初めた時壱の携帯が震えた。
画面を見ると、先程交換したばかりの電話番号だった。
髪を乾かすのを続けたく、そうにその携帯を渡すと、ディスプレイに映された和夫の名前にそうは躊躇いもなく通話を選択し携帯を耳に当てた。
「もしもーし!うん。いっちーは髪乾かしてる!あーそうなんだ!うん!元気!あ、今から買い物行くから一緒に行くー?うん!ならあとで場所送るね!はーい!」
「は?ちょ。変われ」
「え?あ、切っちゃった!」
てへ。と携帯を渡しながら首を傾げるそうに少しの嫌悪を感じながら渡した自分が悪かったと諦める。
「んで、なんて?」
「なんか、ちゃんと帰れたかの電話だった!」
「その電話になぜ買い物に誘った。」
「え?なんとなく?」
そうの言葉にため息をつくと、床に座っていた来人が壱の膝に顎をのせた。
「なーに。誰か他にくんのか?」
「不本意ながらくるみたいだな。」
「誰?」
「高校のときの同級生。」
「ふーん。俺も行くわ。」
「あ?お前仕事休んでるのに家出ていいのかよ。」
「いい。」
「らいちゃんが外行くなんて珍しいねぇ」
ニヤニヤと笑いながらそうが来人を見ると、来人は舌打ちをした。
「そうさんまじ意地わりーっす。」
不服そうに睨む来人にそうはぐっと伸びをして、来人の頭を撫でる。
「優しさの塊だよう。」
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