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昼寝ですっきりした我輩と、夜鍋してくままで作った師匠。情けなさと感謝でいっぱいになり、その場で泣きだしてしまった。気持ちを察してくれてか、師匠は泣きじゃくる我輩を温かく抱きしめてくれた。
今まで馬鹿馬鹿と言われ続けた人生を、ようやく優しく迎えてくれたような気がして感謝で涙が止まらず、いつしかその涙は嗚咽に変わり、その声は山々に響き渡った。我輩、生きていて良かったのかもしれない。
別れ際、師匠は勝ったはずなのに大きな鳥を我輩に差し出してくれた。
「わしに勝ってはくれなかったが、お主が弟子に来てくれて本当に良かった。礼を言う。ありがとう」
「いいえ、お礼を言うのは我輩の方です。しかし、師匠、山を降りて本当にいいのですか?」
「かまわん、お主にかわって、村に書を伝えていこうと思う。お主はこの山に残って、書の修行を続けるがいい」
その言葉を最後に師匠は山を降り、背中が小さくなるまで見送った。
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