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気持ちが落ち着き、改めて師匠への感謝と書の気持ちを強く持ち、師匠の家へと戻った。日はいつの間にか夕暮れになり、家は心なしか古びて見えた。我輩の心が時の流れを速くして、そう見えたのかもしれない。
しかし、間近で家を見ると、それは気のせいではなかった。あれほどまで立派だった家は見るも無様にぼろぼろになっていたのだ。戸のあちこちは穴が空き、壁は隙間風が入ってくる程ひびが入っていた。泥棒でも入ったのか。
家に入ると今朝まで破れた半紙でいっぱいになっていた部屋は、枯葉でいっぱいになっていた。半紙はどこにも無い。驚きのあまり言葉を失くし、落ちている枯葉を見ていると、一つの事に気が付いた。どの枯葉も半分になっている。
我輩、声を高くして笑った。これは狸に化かされたようだ。我輩も馬鹿だが狸も馬鹿よのう。我輩に化けて村に帰れば、両親がご馳走してくれると思っていたのだろうが、勘当されているので家に入らせてももらえないであろう。
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