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書道家に早速弟子入りするべく、元気よく戸を叩き、頼もう頼もうと何度も言った。きっと髭を長く垂らした皺だらけの達人がうるさいと怒鳴って出てくるだろう。達人と呼ばれる者は頑固だと聞いている。我輩それを期待していた。
しかし、出てきたのは、髭もないし皺もそれほどない、代わりに頭がつるつるの爺さんだった。爺さんに書の道を志しているので弟子入りしたい趣旨を力説すると、そうかそうかと優しく迎え入れてくれて、晩御飯をご馳走すると言うのだ。
これは少し、思い描いていた方向とは違うが百歩譲って爺さんなので良しとしよう。我輩、雑炊をご馳走になり、そこでも書に対する熱い思いを力説した。爺さんはそうかそうかと、また優しく微笑み、酒までご馳走してくれた。
弟子は取っておらんと怒鳴られる予定が、初日から至れり尽くせりなのはどうしたものか。一番風呂に入りながら、我輩物思いにふけるのだった。しかし、優しい爺さんと言えど達人は達人、修行が始まれば爺さんも鬼になるだろう。
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