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そんな月日が流れたある日、いつものように鳥を探して山を歩いていると、師匠が休憩しようと言った。今日はかなり歩いたが、一羽も仕止められていないので、さすがの師匠も疲れたようだ。大きな岩に二人、腰を下ろす。
足を伸ばして一息ついていると鳥の鳴き声がした。そう遠くない。鳥の鳴いた方角を二人同時に向いたので、同じ考えであろうと腰を上げると、師匠に手で制された。再び腰を下ろし、何事かと師匠の顔を見ると目に黒いくまが出来ていた。
「お主、ここに来てどのくらい経つ?」
「ひと月程でしょうか」
「狩りは慣れたものじゃの」
「師匠には及びません」
「そう謙遜するでない。……そうじゃ、一つワシと賭けをせんか?」
「賭けですか。……さて、どのような?」
「今、鳥の鳴き声が聞こえたが、腕のいいお主なら探し当てるのは造作もないじゃろう。そこで、先に鳥を仕止めた方が山を降りるというのはどうじゃ?」
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