大人の恋心

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64.❧- " My Treasured Dressとっておきのワンピース "  袖ぐりは脇がぴったりと閉じるように、そしてトップスの前身ごろ は、前から背中にかけて肩に掛かる部位をわざわざ鎖骨の辺りで一旦 カットするというデザインにし、普通のデザインとは違っているという 主張をしたものにした。  それは生地の柄とデザインが最高のグレードで融合した、桂子、渾身の 作品となった。  あの頃、見せる相手がいなかったにも関わらず、あの生地に 魂奪われ、その日から、ワンピースの制作に何かの力に突き動かされてでも いるかのように一心不乱に立ち向かい、ワンピースの完成を 只管( ひたすら)目指す自分がいた。  それほどに、生地が持つ魅力の虜になった。    生地に大ぶりの花のプリントが施されていて、その上にはスプレイマムの 何色かの花を刺繍モチーフとしたシフォン生地が重ねられており、ふるゆわな感じでブーケ感が漂うものになっている。  後で知ったのだけれど、スプレイマムというのはキク科の花で、花言葉が 清らかな愛、高潔というのだそうだ。  すごいっ、と思った。  そんなことなど知らないまま、この生地に惹かれ、そして閃いたデザイン。  そんな素敵なワンピースの出番が、小野寺さんとのデートらしいデートの 日だなんて。  そう思うと感慨深いものがあって私は口ずさんでいた。 『すごいなぁ~♪ すごいなぁ~♪   明日はこのワンピでデートだなんてぇ~~ぇぇぇーーー。  あんなに必死にワンピース縫ったの、この日の為だったのねぇ~』 と。  
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