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68.❧
" Tribute 賛辞 "
この時、小野寺の笑顔が人から見てほとんど分からない程度に曇った。
『あなたは嘘つきだ。
俺はつい先だってあなたの妖艶で艶やかな姿を……
しかもイケてる男性といるところを見てるんですけど!!』
口に出せない言葉を小野寺は胸の内で呟いた。
「釣りしてる時の桂子さんも、家に招待してくれた時の桂子さんも
自然体で良かったですけど、今日の桂子さん……知らない人に見えるくらい
とても綺麗です」
この時、気障というか普段だったら言わない、言えない、賛辞の言葉が
自然と俺の口をついて出て来た。
そしてこんな台詞を言い出した自分自身にも驚いた。
「うわぁー、ありがとうございます。
頑張って オサレしてきた甲斐がありました」
タクシーに乗ること12~3分。
着いたのは高級住宅が居並ぶ、住宅街だった。
こんなところにカフェがあったんだ。
自分が持っていたかき氷屋さんのイメージからは100億万光年離れた
お店が目の前にあった。
他の住宅と違っていたのは、氷の幟と軒先に伸びた雨よけと
日よけを兼ね備えている日よけシェードがあり、その下には芝生になっている地面の上に、客用の小型のテーブルセットが置かれていたことだ。
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