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" Spray Type Chrysanthemum スプレイマム "
桂子さんに会ってから彼女の着ているワンピースの鮮やかな
色とりどりの柄に圧倒されていて、特に洋服全体に散りばめられて
咲き誇っている花が気になっている。
可憐な花なのに、それでいてあちこちに咲き誇ると艶やかなのだ。
俺は彼女の洋服に視線を向けながら、尋ねることにした。
「その可愛い花は何ていう花なんですか? 」
「あぁ、この花ですか? 」
桂子さんが胸元を見ながら訊いてきた。
「スプレイマムっていう名前なんですよ。私もこの花の刺繍が
すごく気に入って生地を購入しました」
「生地? ですか? 洋服ではなくて」
「ええ、そうです。色違いで2枚分」
「もしかして、自分で縫ったとか? 」
「ええ、昨年の秋頃、死に物狂いで。
早くワンピースの完成品を着てみたくて」
「すごいなぁ~、自分の服が作れるなんて! 」
「簡単なデザインなのですごくもないんですけど……実を
いうと手前味噌になりますが、このワンピースはなかなかに仕上がった
かなって思ってます。ふふっ、ところで小野寺さんはあれから休日
何してたんですか? 」
「あー、えー、何もっていうか……」
いやぁー、ここで何もしてなくて暇を持て余してたなんて言ったら
気まずくなるよなぁ。
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