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「拍手するな!感心するな!このヒゲモジャバカ!」
思わず捨て台詞を吐いてしまった。それにしても目の前にいるサンタっぽい奴は、汚らわしいヒゲモジャのくせに、声だけ異様に若い。しかも嫌味かというくらい、いい声をしている。それに独特のテンポというか、空気感が妙に私に絡み付いてくる。
「……うわー、そこまで言われたの初めて」
サンタっぽい奴が口先だけドン引きの様相だった。なんで口先だけがわかるかって?わかるに決まっている。目の前の奴は、言っていることとは裏腹に笑っているからだ。私は自然と睨みつけていた。
「……なに?」
いちいちいい声で言わないでほしい。その空気感をやめてほしい。全て持っていかれそうになる。
「ていうか、何?この状況!なんで私普通に喋れるの?!」
とりあえず、この居心地の悪い空気をどうにかしたくて疑問をぶつけてみる。しかしサンタっぽい奴は何を今更と言わんばかりに呆れたような顔をした。
「なにって……そりゃお嬢さん。今幽体離脱してるからね」
さも当然のように幽体離脱だなんて言わないでほしい。幽体離脱はそんなに身近ではないのだ。少なくとも私の中では。
なんだか空気というか、話の主導権をサンタっぽいヤツに持っていかれそうでどうも気に入らない。どうにかこの状況を打破したくて、目の前のヤツに目に物を言わせてやろうと腕を振りかぶろうとしたが出来なかった。
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