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サンタっぽい奴は、そう言う私をただ見ている。これといって何も言ってこないので、私は言葉を繋いだ。
「もう良いかなと思った。だから飛び降りたの。悪い?」
反応が来ないのがなぜか嫌で思わず突っかかってしまった。こう言うことを言うと悪いと言ってくるのが世の常だと思う。
「いや別に。君の自由だから、それは」
私は固まってしまった。空いた口が塞がらない、というやつだと思う。正直そう言われるとは思ってなかった。
「ハハッ、凄い間抜けヅラだね」
「うるさい」
心底嫌味な奴である。ひとしきり笑った後、サンタっぽい奴は少し笑ったように見えた。髭でほぼ分からないけど。
「悪くないから、もっと詳しく話したまえ」
「何を」
「何でそんなに死にたいのかね、君」
「……」
「君が飛び降りた後、いろんな人が駆け寄って来てたよね。放っとかれてる感じではなかった」
そう。あの感じは私も驚いた。今まで私に見向きもしなかったのに、みんな私を助けようとしていた。少し動かせば、私の器の部品がこぼれ落ちるようなボロボロの身体を。
「今はみんな真っ先にスマホで写真撮るでしょ?だからああいう健全な行動は久々に見たよ」
それも結構偏ってる気がするが、あえてスルーすることにした。
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