即死じゃない!

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即死じゃない!

 「なんで……なんで即死じゃないの!?」  ほんの少し、ほんの数十秒前に、私は死ぬはずだった。死んでいるはずだった。死んでいなければおかしいのだ。即死したのなら私が私の姿を見ることもないし、目の前に誰か現れたとしても知る術がないはずだ。 それなのに、私の目の前にはサンタっぽい髭を蓄えた奴が突っ立っている。 そして私はといえば、私の視界の脇に血だらけの私の器が倒れているのを認識している。腕や足はありえない方向へひしゃげていて、自分で言うのもなんだが見るに耐えない有様だ。 そう、この状況でわかることは一つ。私は即死していないのだ。  「私、3階から飛び降りたんだよ!?どうして即死じゃないの!?」 「打ちどころが良かったんじゃないの」 「そんなことない!頭からイッたもん!ほら見てよ、そこで倒れてる私の頭。それから今の私の頭も。ねっ?陥没してるでしょ!」  そう。私の頭は見事に陥没している。私の器も今の私も。それだけ見事な落ち方をしたのだと思う。でも即死じゃなかった。どうして。 そんな私をよそに、私が抱える絶望感、悲壮感などまったく興味がないのか、サンタっぽい奴は、私の器と今の私をチラ見するとダイナミックに逝ったねぇと感心しながら手を数回叩いた。その反応が妙に癪に触った。
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