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さやかは仕方なく、地元の高校に進学をした。
早く窮屈な田舎から出たかったから、寮のある東京の私立の高校に行きたかったけれど、保守的なさやかの両親は大反対をした。「どうして行きたいのか理由を言いなさい」と言われれば、さやかは答えに詰まってしまった。
中学生の頃と変わらず、高校でだけスカートを履いていた。
実家から自転車で通えるところだったから、小学校と中学校が一緒だった子も数名同じ高校に進学していた。
高校二年生のとき、同じクラスの安田という男子がやけにさやかに絡んできた。
友達は「安田、さやかのこと好きなんだよ」と、ニヤニヤしていたけれど、さやかとしてはあまり嬉しくなかった。
でも他の男子よりは嫌悪感はなかった。
安田は男子にしては細身で、綺麗な顔立ちをしていたからだと思う。
あの頃、さやかが好きな男の子の名前ひとつ漏らさないことに、男性芸能人に興味も持たないことに、不審がりはじめた友達がいた。
その子に、「さやかって男の子に興味ないの? 」と聞かれて、「そんなことないよ」と、さやかは嘘をついていた。
嘘をつき続けることが苦しくなって、限界を感じたさやかは、安田と交際することを決めた。
友達が安田をグイグイ勧めてきたのもあったし、さやかが密かに好きだった女の子が「お似合いだと思うよ」と、祝福してくれたのが悲しかったから。
それに、自分も男の子と付き合うことができれば、好きになることができれば、同性愛者だということをカモフラージュすることができると思った。
男子である安田を好きになれれば、他の男子のことも好きになれて、いつかは男性だけを好きになれる日が自分にもくるかもしれないと思った。
女の子を恋愛対象として見ずに、周りと同じ健全な女性になれるかもしれないとさやかは考えた。
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