クローゼット

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クローゼット

 十八歳のさやかが進学先に選んだ大学は、都心部からは少し離れた長閑な住宅街の中にある、東京の恵徳(けいとく)女子大学だった。  高層ビルに囲まれた生活に憧れてはいたけれど、田んぼと個人経営の商店が並ぶ下町具合は、さやかの地元とさほど変わりなく、ギャップを感じることはほとんどなかった。  執拗な目線が無くなったのは、嬉しいギャップだった。  電車に数分乗っていれば、東京らしい大型のモニターの付いているビルが現れて、ファッション誌からそのままランウェイしているような人々もたくさん見かけた。  田舎の地元とは違って、みな忙しそうに足早に駆け抜けていくから、やはり自分を見ている人はいなくて、さやかは気が楽だった。  女子大にしたのは、男子に興味が無いことがわかりにくくなると思ったから。  男子からの『女』というレッテルを貼られる機会が減ると思ったから。  文学部なんてどこにでもあるような学部だし、都会で自由に息をしたかった。
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