Episode 1

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 とある時代のとある国、人々はこの国を楼(ろう)の国とそう呼んだ。 「ぷんさん!どこへ行かれるんです?」 通りすがりの町人から声を掛けられ振り返るこの男、その名も『ぷん座右衛門』。声を掛けた張本人は運び屋の玄助(げんすけ)。前に一度、欲張って荷を載せすぎた手押し車が動かなくて困っているところを助けて以来、見かける度にこうして声を掛けてくるようになったのだ。 「べつに、ただ暇を持て余しているだけだ。」 「あ、なら丁度良かった!ちょっとぷんさんに見せたい物があるんすよ!一緒に来てくだせぇ!」 面倒だと思いながらも、玄助の後に付いていく。しばらく砂利道を歩いていると、遠くの方に何やら人だかりが出来ている。 「あれですよ、ぷんさんに見せたかったのは……」 見物人達の肩の隙間から目を凝らして見てみると、道の上に虹色の鳥の羽のようなものが落ちているのが見えた。だが問題は、その大きさだ。何とその羽、長さが大の大人を横に二人並べた程ある。一体どんな生物がこんな大きさの羽を身にまとっているというのか。 「そう言えばこの辺り、最近人さらいが多発しているって聞いた事あるんすよ。何か関係があるんすかね?」 そう言って肩をすくめる玄助をその場に残し、「くだらん。」と鼻をほじりながら来た道を戻った。
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