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第2話
たとえどんな姿になってしまったとしても、また話ができた事が嬉しい。何も話すことも出来ず、突然この世を去ってしまったから。本当に突然の出来事で、気持ちの整理もできないまま、時間だけが過ぎていく。
「 いやぁ、それにしてもこんな可愛い姿になったとはなぁーー。小さくて可愛いぞーー!このまま潤て呼んでたらさ、俺が頭おかしくなったと思われるだろ??だから、お前、ジョンな!犬っぽいし、ジュンて名前とも少し似ているし!」
ーー似てるとか、どうでもいいんだよ!!もっといい名前ねぇのかよ!ボケカス!!
その時だった。声が出てないはずなのに、俺の頭の中で声が聞こえた。今の声って一体どこから聞こえたんだ?
「 お前、今、俺の声聞こえただろ!?完全に聞こえてたな?? 」
「 なんだ今のは?ボケカスって……聞こえた気がしたけど 」
「 よしよし!今、試してみたんだ。無事に成功しているじゃないか!お前が寝てる間に、ちょっとしたプレゼントをしといた。お前がその手で触れているものや、人間でも同じ。裏の声が聞こえてるはずだ。真実を照らす、裏の声が…… 」
そう。これが俺の不思議な能力だ。俺の手で触れると、その人たちの裏の声が聞こえるんだ。こんなありえない事が普通に起こっている事が不思議でたまらない。
そして、現在、俺たちは、優しい夫婦に育ててもらった恩返しとして、獣医になっていた。こんな恩返しで嬉しいと思ってくれているか、わからないけれど。俺たちは俺たちで一生懸命頑張ったんだ。
夫婦がやっていた動物病院を、俺たちが引き継ごうと一生懸命働いている。いまは、俺独りになってしまったが。夫婦は、どうしてもこの動物病院を引き継いで欲しかったみたいだ。それがこの夫婦の願いだったから。
夫婦と呼んでいるが、実際にはちゃんと、父さんと母さんって呼んでいる。そんな父さんも母さんも、もう結構歳をとってしまっているが、頼りない俺のせいもあり、病院の手伝いをしてくれる。
潤がこの世を去ってしまった事で、俺に気をかけてくれて「 しばらく、休みなさい 」と、言ってくれている。本当に優しい。俺は、休み休み病院を手伝いながら、しばらくこの子犬と過ごすことに決めたんだ。
俺より、潤の方が頭もいいし、きっと性格もいい。せっかく一緒に獣医になれたのに。神様は意地悪だ。でもこれって、本当にプレゼント?って思うし、この与えられた現実が潤だって事を、俺は信じまくってやろうと思う。
それにしても、俺のこの不思議な能力は、一体なんの為に、プレゼントされたのだろうか。
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