第4話

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第4話

俺は自転車で急いで店に向かった。店の前に着き、大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。 「 ジョン。大丈夫だよな?サラさん。大丈夫なんだよな?? 」 「 あぁ。きっと、大丈夫だ 」 店のドアを開けようとした瞬間!!声が聞こえてきた。 ーーこんな事。有り得ない。 「 また声が聞こえたか?? 」 一瞬立ち止まった俺に、ジョンはそう言った。 「 ドアを触ると、声を聞きたい相手の声だけが聞こえるのかもしれない。その能力、詳しくはまだわかっていないから。俺も 」 そうだったんだ。でも、はっきりとサラさんの声だった。よかった。サラさんは無事だ。 大丈夫だとわかった瞬間、俺は勢いよく店のドアを開けた。 店の中を見てみると、いつもとは全く違う光景だった。 「 なんだよ。これ…… 」 「 翔吾!見てよ!これ!!来てくれたんだ。朝来てみたら、こうなっていたんだ 」 店内は、何かわからない大きな木が、天井を突き破り生えてしまっている。 「 こんなんじゃ。店、開けない!!最悪だ 」 この木は、一体どこから来たんだ。なんでこんな事に。普通じゃない現実が次から次へと巻き起こってしまっている。 「 サラさん。今日は休んで 」 サラさんは、椅子に座り、カウンターに頭をつけ涙を流していた。命よりも大切だと言っていたこの店がこんな事になってしまい、かなりのショックを受けているに違いない。俺はますます、心が痛くなり、胸が苦しくなってしまう。サラさんのこんな表情。見たくなかった。 サラさんを後ろから抱きしめたい気持ちを抑え、肩に手を置いた。 ーーお前がいても、役に立たねぇんだよ。 えっ……。 俺は思わず、サラさんの肩から手をはずした。 サラさんの裏の声なのか。こんな事、思っていたのか……。聞きたくない。聞きたくなかった。
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