第5話

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第5話

こんなの、サラさんじゃない。こんな事言うはずがないじゃないか!!この木のせいなのか。変わってしまったのか。それとも本当にこんな事を思っていたのか。 これは夢なのか。夢だったらいいのに。これがもし現実だとしたら、受け止めていける自信がない。 辛くて、悲しくて、怖くて。そして、寂しい。カウンターでうずくまっているサラさんを後ろから見ながら、俺はただ呆然とする事しかできなかった。 これじゃ、役に立たないと言われても仕方がないとも思っていた。 この木……。もしかしたら、俺が手をかざす事で、何かわかるかもしれないと思い、ゆっくりと手のひらを木の幹にかざした。手をかざした瞬間から、何故か自然と俺の目からも涙がこぼれ落ちる。 ーーお前を待っていた。助けてくれるのは、お前しかいない。翔吾。乗り越えるんだ、辛くても。今を……。 これは、木が喋ったのか。どこから聞こえた声なのかわからない。そして、涙が止まらない。意志とは関係なく溢れ出てきてしまう。 一体、いま何が起きているんだ。 「 ジョン。これは一体…… 」 「 とりあえず俺たちは、外に出るぞ。しっかりしろ!!翔吾!! 」 ジョンに言われた通り、後ろ髪を引かれる思いで外へ出ることにした。 「 サラさん、大丈夫なのか??」 「 大丈夫、きっと 」 「 きっと……。曖昧に言ってんじゃねーよ 」 悔しくてたまらない。何も出来ない自分も。起こってしまっている現実も。サラさんの言う通りだった。 本当に。俺は、なんの役にも立ってない!! 「 あのぉーー 」 店を出て、自転車を押し、少し進んだ所で後ろから声をかけられる。声がした方を見てみると、女子校生?か女子大生?童顔ぽい感じの女性だった。 「 はい。なんですか? 」 「 その……カゴの中って 」 「 子犬ですよ 」 「 あぁーー!やっぱりーー!実は、さっきからじーっと見ていてわかっていたんです!!触っていいですか?? 」 「 はい。どうぞ 」 その女子は、嬉しそうな顔をしてジョンを抱きあげた。 「 ほら。悪いこともあれば、いい事もある!! 」 「 それは、今のお前だけだ!! 」 ジョンが嬉しそうな声でこう言った。 「 可愛い!!よしよし、いい子だねぇー!あのぉー。あとお願いがあります 」 「 何でしょうか??」 「 助けてください!! 」 「 えっ!? 」 全然そんなふうに見えない。助けてって言ってる人な感じに全然見えないんだけど。 「 帰ったら、家が潰れてたんです。泊めてください 」 「 えっ……そんな笑顔でなんて事を 」 「 行く場所なくて……。お兄さんは、ワンちゃん連れてそうだから、絶対いい人かなって。それでは、ありがとうございます!いいってーー!出ておいで! 」 まだ何も言ってない。その女子が呼んだ方を見てみると、小学生くらいの男の子が犬を連れていた。 「 また犬……あの。いいよって言ってないけど 」 「 そのワンちゃんがいいよって 」 「 あっ。聞こえてたんだ 」 「 はい。今日から会話ができるようになってたんです。今、あの子が連れてるウチの子とも 」 訳がわからない。みんな話せるようになってるっていう事なのか。謎の不思議な現象がどんどん続いている。
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