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私は、ハローワークで見つけた警備会社に就職した。百貨店で施設警備をやることになった。
それから、十九年、ずっと警備の仕事をした。その間、三つの会社に勤めた。
松崎や返済されなかった二百万円のことは、時々、思い出す程度であった。ただ、もし松崎に合ったら思い切り、顎と頬とボディーに拳をぶちこんでやると決めていた。
年金の受給手続きを終えると、二百万円がまとまって銀行に振り込まれた。十九年前、松崎から返してもらえるはずだったお金が、形を変えて回り回って自分のところへきてくれた。
そんな気がした。
驚きと嬉しさと安堵と幸せが混ざり合った。不思議な心地に浸った。大袈裟に言えば人生の神秘に触れた気がした。
了
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