十九年後

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そんな不安定な時、松崎から電話がきた。彼は、最近、興信所を開業した。予想以上に仕事が入ってきた。調査員が足りないので助けてほしい。 そんな話だった。 私は、彼と同じ会社に勤めていたけど、松崎は営業だった。事務所は別々で、顔を合わすことはほとんどなかった。彼は、見た目は明るく、陽気である。しかし、どんな男か全然分からなかった。 軽はずみに、やるなんて言えない。どういう風に断ろうか考えた。 松崎は、会って話がしたいという。やむを得ず池袋で会うことにした。 翌日、池袋に行った。松崎はスーツを着てネクタイを締めていた。なかなか元気があり、これから会社をつくっていくんだという情熱が伝わってきた。 駅前から徒歩十分ぐらいの住宅やアパートが密集した場所に連れて行かれた。アパートの二階に事務所兼住まいがある。狭い。一DKだろう。
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