十九年後

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いままで汚れた世界で、狡く生きていた。調査の仕事は、きたない。濁った水の中を泳ぐ鯉みたいだ。そんな汚れた世界から、健康的なテニスの世界にやってきて、ずいぶん気持ちが楽になった。 徐々に仕事が増えた。一人では処理できなくなった。そこで知人たちに頼んだ。それでどうにか期日までに終了させた。 松崎は、池袋に新しく事務所を構えた。以前の三倍も広かった。営業社員も雇った。銀行から借金し、信用保証協会にも入れてもらった。 私は松崎から頼まれて、信用保証協会の保証人になった。順調に仕事が増えていった。 しかし、いつまでも続くわけではなく、やがて仕事が激減した。松崎と付き合って、七年後だった。
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