十九年後

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それなのに私は、ズルズルと松崎と付き合っていた。自分の読みが甘かった。松崎に貸した金は、二百万円にのぼった。こんな状況では戻ってこないだろう。 次第に松崎と連絡する回数が減り、廃業することになった。松崎と最後に会ったのは喫茶店だった。 私は二百万円の返済を迫った。話しているうちに興奮してしまい、周囲の客が注目するぐらい大声を出していた。 松崎は、オドオドするばかりで不安気な態度に終始した。いつもの自信たっぷりな様子の欠片もなかった。 松崎は、毎月一万円ずつ必ず返済するからと泣きそうな顔で応えた。 いくら返済を迫っても松崎は、お金を持っていないように見えた。仕方なく、その話は終わりにした。喫茶店を出て、店先で別れた。お互いに何も言うことはなかった。冷たい風が心に吹き荒れていた。
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