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「よりにもよってさあ、うちの班に入れなくてもいーじゃん」
はああ、とベッドの上に突っ伏す私。
「先生空気読めてなさすぎ、生徒のことわかってなさすぎ。まあ、前からそーゆーとこもあるなあとは思ってたけどさあ。うちらが一番あの女嫌ってるんだってマジで気づいてなかったのかっていうねー」
何故、よりにもよって自分達の班に推しつけるのか。
渥美絵真。
ブス、根暗、無口、ぼっちと三拍子どころか四拍子揃っているムカつくやつ。今まで何度かディベートの授業などで一緒に組まされたが、まあこいつがいるだけで話し合いが進まないこと進まないこと。全員に意見を聞いて課題を進めないといけないのに、こいつときたら話を振られるまで一言も喋らないのが当たり前。いざ“渥美さんはどう思ってるの”と尋ねると、ものすごくしどろもどろになりながら、回りくどいことをぽつぽつと話し始める始末。しかも、大筋とはまったく関係のないところが気になったりするから、彼女が話すとそれだけで議論が止まるのである。空気読めや、もっとはっきり喋れやノロマ、と何度思ったことか知れない。彼女に散々迷惑をかけられた後は、ストレス発散もかねて裏掲示板やLANEで愚痴大会をするのが常なのだった。
まあようするに。私達三人、特に私からはものすごく嫌われている少女であったのである。
こっちが悪くもないのにいじめ扱いされてはたまらない、と表立って文句を言わないように気を付けていたのは事実だ。しかしだからといって、何で一番彼女に迷惑をかけられていて、嫌っている人間のいる班に入れてやれなんて言い出すのか。先生にそんな提案をされたら、みんなの手前もあって絶対に嫌だとは言えないというのに。
『渥美もさあ、あたしたちに嫌われてるのわかってるはずよね』
笑里が心底うんざりした声で言う。
『マジで修学旅行、来る気なのかな。針の筵になるの、あっちだってわかりきってるはずでしょ』
「来るんじゃないの、だってあいつもあいつで空気読めないんじゃん。ていうか空気読めてたら、先生に“この班に入れて貰おう”ってやられた時、自分から断るでしょ」
『あー、それもそっかあ』
「つかー。修学旅行って、成績に影響するんじゃなかったっけ?あいつ中学受験組じゃなかったとは思うけど、それでも成績下がって親に叱られんのは嫌でしょ。修学旅行休んだだけで評価下がるのとかタルいし、そういう意味でも休まず来ようとすんじゃないの。こっちの迷惑も考えなしにさ」
『げぇ、ほんとマジうっざー』
少し前にアキともやり取りしたが、彼女もほぼほぼ同じ感想だったようだ。願わくば当日風邪でも引いて、修学旅行を休んでくれやしないだろうか。そんなことを言って盛り上がったが、あながち冗談でもなかったりする。
彼女さえいなければ。楽しい楽しい京都旅行が確定するというのに。
『じゃあさ亜矢、気休めでもやってみるう?』
ふと、笑里がため息交じりに言いだした。
『うちの学校の七不思議にさあ。人を呪う方法ってのがあるみたいなんだよね。ダメ元でさ、修学旅行の前日にやってみないー?』
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