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扉をぶちやぶったことで、部屋の前にいたカマキリのような外観の社員たちが吹き飛ぶ。
ネアはそのまま廊下へと飛び出し、部屋の周辺いた敵を蹴散らしていく。
普段の軽薄な彼女からは考えられない圧倒的な強さで、その機械の腕を振るっている。
「さすがは帝国軍大尉といったところか。よし、ネア大尉が敵を引きつけている間に脱出するぞ!」
パロマが軍刀――夕華丸を構え、部屋から飛び出す。
彼女に続いてバヨネット·スローターを握ったラウドも走り、コラスを肩に担いだシヴィルも駆ける。
エレベーターを目指すパロマたちの行く手には、当然社員たちが襲い掛かる。
昆虫のように天井や壁に張り付いた義体の群れが、その身体から飛び出す無数の刃を向けて来る。
「はぁぁぁッ!」
パロマは向かってくる義体の群れを、火花を散らしながら斬り倒していく。
彼女が使う夕華丸は、高周波ブレードの原理で動く刀だ。
たとえ金属でできた身体とはいえ、その刃の前ではまな板の上の食材と変わらない。
ラウドはそんな彼女を後方から援護。
バヨネット·スローターから電磁波を放ち、天井や壁に張り付いている敵を撃ち落とす。
「ウジャウジャと気味悪いな~。まるでコンクリートジャングルって感じだね」
「言い得て妙。都会のジャングルでも虫はつきもの。シヴィルもそう思う」
ラウドの言葉にシヴィルが頷く。
小柄なシヴィルが片腕で大人の女性を一人担ぐのは、一見辛いと思うが。
この灰色髪の少女は、才能の追跡官の中で五本の指に入るほどの怪力だ。
その五本の指の順位は――。
一位-リズム·ライクブラック
二位-マローダー·ギブソン
三位-シヴィル·エレクトロハーモニー
四位-パロマ·デューバーグ
五位-ニューファ·ビスト
以上である(特殊能力無しの順位)。
ちなみにラウドは十三人中で八位であり、ディスは最下位の十三位だ。
パロマに前線を任せ、ラウドが援護する陣形で、シヴィルは余裕を持ってコラスを担いでいることができていた。
そして、目的のエレベーターへと辿り着いたパロマたちだったが、そこへ階段を使って来たと思われるカマキリ義体の集団が群がってきた。
昆虫のような外観には似合わない、まるで獣のような機械音声で叫び飛んでくる。
「ラウドッ! エレベーターはどうだッ!? 使えそうか!?」
「使えそうだけど、誰かが動かしたみたいで、ここまで来るのに時間は掛かりそうだよ」
「くッ、しばらく堪えるしかないか……。全員私の後ろから動くなよ! はぁぁぁッ!」
パロマは飛び掛かってくる敵を斬り裂くが、何せ数が多過ぎた。
このままではコラスを奪い返されてしまうかと、彼女が思っていると――。
「まだこんなにいたのね」
突然ネアが現れ、カマキリ義体たちを一掃する。
まるで解体用鉄球の衝突ように、あっという間のスクラップへと変えていく。
その間に、エレベーターが到着。
シヴィル、ラウドが乗り込む。
パロマもエレベーター内に入り、ネアへと叫んだ。
「急げネア大尉ッ!」
だが、ネアはパロマを一瞥して笑みを浮かべるだけだった。
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