2021.04.09. むしろドブ以外にいることの方が多いはずなのにの話

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2021.04.09. むしろドブ以外にいることの方が多いはずなのにの話

世の中にはあだ名や通称というものがありまして、これは人間だけで無く動物や道具の世界にもあります。 カマドウマは「便所コオロギ」などと呼ばれて親しまれておりますし、「ねこ」と言うと土木現場では手押しの一輪車のことを差します。 が、悲しいことにドブネズミはあだ名では無く本名なんです。 実際ドブにもいるし、生で見ると三十cmぐらいあるその巨体にけっこうヒくし、危険な病原菌媒介動物としてもお馴染みなので、こういった蔑称を与えられても多少仕方無いとは思いますが、実はドブネズミは重大な冤罪を被っているらしいのです。 古くからドブネズミはあまり衛生的では無い場所に頻出し、あげくペスト菌やハンタウィルスなどの病原体の媒体となるため強く忌避されてきました。 しかし近年、中世ヨーロッパで大流行し長らくペストと同類と考えられてきた「黒死病」について、実はペストではなくウイルス出血熱であるという説が現れ、しかも仮に従来説の通りペストだったとしても、ペスト菌の媒介者はネズミでは無くノミ・シラミだったと言うのです。 えぇー?ドブネズミ、かわいそう。 そう言えばアホウドリも本名だからけっこうかわいそう、ちょっと歩くのが苦手で簡単に捕まっちゃうってだけでアホウだなんて。 ジャイアンはあだ名なのにジャイ子は本名という件については目をつぶるとしても。 あげく、ネズミに付いたノミがヒトに渡ってペスト菌をうつした、というパターンよりも、ヒトからヒトへ渡り歩いたノミ・シラミがパンデミックを引き起こした、という可能性の方が遥かに高いとされています。 どうしましょう、人類は何百年もの間、何億匹というドブネズミに対して勝手な決め付けで取り返しのつかない迫害を与え続けてきたのです。 弥生時代に高床式倉庫の収納した米を守るために「ネズミ返し!」とか言って柱に板を付けて登れなくしていたようなレベルではありません。 一方で同じネズミなのに、二足歩行をして歌って踊って世界各地に巨大娯楽施設を構えて優雅にサービス業を営むものや、「萌えきゅんっ!」的な扱いで手厚く飼育され、回し車の中を延々走り続けている愛玩動物もいるというのに、壮絶な格差です。 どうしたら許してもらえるでしょうか。 とりあえず祈念碑でも建てて千羽鶴とか奉納したら良いでしょうか。 名前をドブハムスターに格上げしたら良いでしょうか。 そしたらもしかして間違って飼ってくれる人も出てくるかも知れませんし。 ……あぁ、間違ってって言っちった(笑
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