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徐々に声のトーンを成瀬が上げたから、近くに座っている人たちが私たちを見た。
注目されるのは、恥ずかしい。
成瀬は立ち上がって「出よう」と言った。私は「そうだね」と成瀬に近寄った。私の背中にそっと手を当てた成瀬は、耳もとで囁く。
「二人だけになりたいよね」
『出よう』はそういう意味だったのか……成瀬も周囲の視線を気にして、この場を離れようとしたのでなかった……。
私は『そうだね』と答えてしまった。成瀬は私も二人だけになりたいと思ったに違いない。
でも、ここで話すよりは二人だけになれる場所で話したい。
私たちはホテルに戻り、成瀬の部屋に入った。
「一人なのにダブルルーム?」
「ああ、シングルベッドだと落ちそうで心配なんだよ」
理由が成瀬らしくて、笑ってしまう。
成瀬は窓まで行って、手招きした。
「今日は空気が澄んでいるから、夜景がキレイだよ」
成瀬の隣に並んで、私も外を眺める。私が泊まるはずだっま部屋と同じ階だから、そこからの眺望と変わりはないのに、とても輝いて見えた。
「キレイだね」
「うん、右の方も見て。ギリギリだけど、スカイツリーも見える」
「わあ、ほんとだ」
「今夜は中田に会えて良かった」
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