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 今回乗った夜行バスは運転手の休憩のみで乗客は途中で降りて休憩はできない。トイレは車内にある。夜行バスの旅は過酷だとか眠れないだとか言われていたようだが俺にはあまり関係ない。座り心地に関わらず寝てしまうから。乗車時間のほとんどを睡眠に充てた。横浜駅に着くのは朝の7時頃。普段の俺ならまだ寝ている時間。前の晩と同じく目がほとんど開いていない状態で二郎君に手を引かれながらバスを降りた。そのまま電車に乗る。横須賀線。宮城県民の俺には馴染みのない名前。二郎君がいて本当に良かった。というか二郎君がいなかったらこんな形で旅に出ようという気にもならなかった。40分ぐらいで目的の駅に着いた。横須賀駅。二郎君の故郷。駅から出て歩き始めると心なしか海のにおいがした。少しずつ目が覚めていく。海沿いの広場のような所に着いた。二郎君がベンチに俺を座らせる。俺は顔を上げて二郎君を見た。 「流石は地元民です。迷いがない」
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