第2章

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 バイクに跨がりながら、あかりに薬の写真と口に入れても大丈夫な物で作ってほしい、と添えてラインに送った。  「まだ講義中だろうな」  スマホをポケットにしまうとバイクのエンジンをかけた。慎吾達と待ち合わせの時間にはまだ一時間近くある。ふと思い立って、自分の家へと走り出した。  2日ぶりの自宅は何も変わらないけど、すこし空気がよどんでる気がして窓を開けた。  仏壇に向き合い、線香に火を着けた。やっぱりこの香りは嫌いだと思う。  父親と母親の写真に手を合わせて頭を下げた。  全部上手くいくように、力貸して。  今まで線香も上げない、手を合わせた事のなかったおれが願い事なんて、むしがよすぎるだろうけど、それでもお願い母さん助けて。  暫くして頭を上げると、窓を閉めて家を出た。  まだ少し時間には早いが待ち合わせのファミレスに向かった。  ファミレスに着くとハンバーグ定食を頼みドリンクバーでコーヒーを注いだ。  ハンバーグを食べていると、尚輝が走って席にやってくる。  「尚輝、店ん中走るな」  「すいませんっ!もう響さん来てると思わなくて」  「いいよ、おれが早く来ただけだし」  「響さんっ!」  入口からやっぱり慎吾が走ってやって来る。  はぁ、とため息をついて、尚輝に座れとアゴをしゃくった。  「響さんっ!遅れてすいません!」  テーブルの横で頭を下げる慎吾に回りの客からの視線が痛い。  「慎吾、もういいから座れ」  頭が痛くなりそうだ。  「あの…きょ」  「ちっと待って、食べとるから。お前らも何か頼む?」  「あ、じゃあドリンク取ってきます」  慎吾が立ち上がり、尚輝はメニューからデザートを選んで、お姉さんを呼ぶとチョコパとドリンクバーお願い、と嬉しそうに注文をした。  コーラを注いで戻ってきた慎吾が、パフェを頼んだ尚輝の頭を呆れた顔をして小突いた。  ハンバーグを食べ終わり、コーヒーを啜りながら二人を眺めてみる。  「な、なんですか?響さんに見られると緊張するっス」  尚輝がキョドる。  「いや、可愛いなと思ってさ、お前ら二人は」  二人して顔を真っ赤にしながら、下を向いて照れてる。  「反則っすよ、響さん」  とか言うけど、意味わかんねぇ。  「じゃ本題に入ろうか」  そう言うと、二人は背筋を伸ばして座り直した。  「頼みがある。お前らが信頼出来て口の硬い奴、絶対に薬に手を出してない奴を選んでほしい」  「……理由聞いてもいいんですか?」  慎吾が恐る恐る聞いてくる。  「詳しくは言えないけど、薬の売人と仲介者を潰すつもり」  「っ!…それってこの前言ってたクラブに行くなってのと繋がってるんすか?」  「鋭いな。で、選んだらこいつらの行動の報告と、誰かと会ってたらその写真を撮って送ってほしい」  動画と写真を二人に送信して、画面を見せる。  「こっちの女が会ってるこの男、こいつが会う奴全部写真撮って、この女、こいつが会う男の写真も」  「売人っすか?」  「仲介者だ」  「売人がまだわかんねぇ、逐一じゃなくていい、見かけたらでいい、つけるとかもしなくていい」  「おれらが選んでホントにいいんですか?」  尚輝が真剣な顔つきで言う。  「お前らが選んだなら、間違いないだろ?そんくらいは信頼してるよ」  そう言うと、二人して涙ぐんで、はいっ!と返事をする。  伝票を掴んで先に出ようとすると、尚輝が金を渡そうとする。  「面倒な事頼んでんだから、これくらい払うって」  「ありがとうございます。ゴチになります!」  二人して頭を下げてくる。  「全部終わったら、美味い飯奢ってやるからな」  嬉しそうに笑う二人と別れて、あかりにもう一度連絡をとった。  コールが続いて出ない電話を切ろうとすると『もしもし』とあかりの声が聞こえた。 「あかり?おれ響だけど」  『響、あれ何なの?どういう事か説明して!』  怒ったような声に少し怯みつつつ、もう家に居るというあかりの部屋へと向かった。  一人暮らしをしてるあかりの部屋は、作品なのかよく分からない物で埋めつくされてる。  チャイムを押すと、玄関で待っていたんじゃないかってくらいの早さでドアが開いた。  「響っ!目見て!顔見せて!」  玄関先であかりの勢いに後退りする。  おれの顔をじっと確認したあかりは、ようやく部屋にいれてくれた。  「で、あれは何?ダミー薬だなんて何に使うの?」  目の前に座るあかりに全てを話す訳にはいかないけど、納得させる為にはある程度言わなきゃいけない。核心をごまかして説明すると、なんとか納得してくれた。  「……分かった。試作品作ったらまた連絡する。響、危ない事しないでよ?」  「うん、ありがと。あかり」  お礼を言ってあかりの部屋を出た。時間は21時を回ったばかりで、皆が集まってるだろう卓也に部屋に向かった。
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