反逆 報復 あの日の月

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ニストニア王国は霧の王国と呼ばれていた。 というのも、山林の4分の3に植わるルチスタ松が、年中花粉を飛散させ、霧が立ち込めたかように視界が悪かったからだ。 私達は、昔からこの松と共に生きてきたので、それに対して特段、気に留めることはなかった。 が、ちょうど一年前、この松が外来昆虫の影響で同時期に枯れ出した。 一度虫に付かれた松は倒木せざるをえなくなり、結果、私達は大量のルチスタ松を失った。 この松の消失に反比例して、なぜか、魔族たちの行動は過激化していく。 彼らは暴徒化し、建物の窓ガラスは割れ、雇用主は強襲の犠牲となった。 ルチスタ松の花粉に、魔族の神経を鎮める成分が含まれてることが分かったのは、城を襲撃される2週間ほど前のこと。 そう、私達は、真に魔族と共存できていたわけでも、分かり合えていたわけでもない。 魔族たちは単に、松の花粉のせいで、本来の攻撃性を失っていただけだったのだ。
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