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魔族と、人間は、仲良く暮らしていけると思っていた。
――つい、この前までは。
「おまえがアリーシュか」
玉座の前に跪く私。
隣の兵が、槍の先で、私の顎を上げる。
「ニストニア王国の第一王女。やっと見つけたぞ、散々手をかけさせおって。
お前の父も母も兄も、すでに処刑した。
残るはお前だけ。さぁ、どうやって皆に晒そうか」
そう言って口をゆがめる魔王。
その時、後ろから凛とした声が響いた。
「お待ちください、父上。この者の処分、私に委ねていただけないでしょうか?」
振り返った私の、目線の先にいたのは。
「ラウ……」
思わず、その名をつぶやく。
ラウ。
クーデター前日まで、私の従者の一人として城で働いていた、魔族の青年だ。
「私はこの者に城へ連行され、
十数年もの間、強制労働に従事させられていました。
この恨みを……直接晴らさせていただけませんか?」
「ほう」
魔王が口髭をさする。
端正な顔立ちのその青年を、私は唇をかみしめながら、じっと見つめていた。
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