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私とラウが出会ったのは、夜の歓楽街の裏道だった。
劇の鑑賞を終え、帰ろうと共を連れ街を歩く最中、ふと、後ろから鈍い音が聞こえた。
そっと、狭い路地を覗くと、そこには数人の男たちに囲まれた、魔族の少年がいた。
「魔族のくせに、俺たちにガンつけやがって」
そう言って頬を殴る男。
ラウは地面に腰をつき、唇から出た血を拭いながらも、じっと男たちを見上げている。
燃えるような、紅く鋭い眼光。
その目は、怯えている、というより、怒りに震えているようにみえた。
魔族と人間の違いは、さしてない。
耳の先端が尖っており、瞳の色が鮮やかな者が、魔族だ。
魔族は人間と相いれない存在で、他国では年がら年中、その両者間でテロや紛争が勃発していた。
しかし、私の国は違った。
私の国に住む魔族は、他国の種と比べ、腕力がなく、穏やかなようだった。
だから人間に従属する者がほとんどで、
私達の国だけが、彼らとの共存の道を歩んでいた。
が、魔族を差別する人間は未だ多かった。
今目にしている光景も、特段珍しいものではない。
しかし。
「引きなさい。この者は、私が城に連れ帰ります」
男たちの前に躍り出た私は、知らない間に、そう口走っていた。
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