反逆 報復 あの日の月

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「あ……れ……?」 私は口をポカンと開ける。 そこにあったのは、清潔なシーツが引かれたシングルサイズのベッド。その脇にはデスクと椅子。おまけにランプまで、灯っている。 禍々しい道具類は、一切ない。 同時にラウが、扉を閉める。 そして次の瞬間、彼はいきなり床に跪き、深々と頭を下げた。 「度重なるご無礼、申し訳ございません。アリーシュ姫」 思わぬ動作に、私も思わず、しゃがみ込む。 「これは……どういうことです?」 「お救いしようとしたのです。 陛下も、皇后様も、皇太子様も。 でも、できなかった。 その上姫様までこんな目に……。 謝罪の言葉もございません」 声を震わせる彼の肩に、私はそっと、手を置く。 「さっきのは、皆を欺くための、ふり、だったの?」 「……正面切って意見を言っても、彼らには通じない。 貴方だけでもお救いするためには、先のように言って、二人の時間を作るより、仕方がなかったのです。 しかし、さぞ、恐ろしい思いをされたでしょう?姫様。 本当に、本当に申し訳なく……」 「顔を上げて、ラウ」 私の言葉に呼応し、そっと面を上げたラウの目には、涙が浮かんでいた。 「皆様からの恩を、仇で返すことになってしまいました。 でも、信じてください。 貴方だけは、必ず、必ずや生きて、国外に逃がすつもりです。 準備ができるまで、数日の間、こちらでお過ごしください」 「でも、私の亡骸を献上しろと」 「そんなこと、どうにだってなる。 私は、私の人生をかけて、貴方を守ります。それが、私にできる最後の償い……」
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