10人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ……れ……?」
私は口をポカンと開ける。
そこにあったのは、清潔なシーツが引かれたシングルサイズのベッド。その脇にはデスクと椅子。おまけにランプまで、灯っている。
禍々しい道具類は、一切ない。
同時にラウが、扉を閉める。
そして次の瞬間、彼はいきなり床に跪き、深々と頭を下げた。
「度重なるご無礼、申し訳ございません。アリーシュ姫」
思わぬ動作に、私も思わず、しゃがみ込む。
「これは……どういうことです?」
「お救いしようとしたのです。
陛下も、皇后様も、皇太子様も。
でも、できなかった。
その上姫様までこんな目に……。
謝罪の言葉もございません」
声を震わせる彼の肩に、私はそっと、手を置く。
「さっきのは、皆を欺くための、ふり、だったの?」
「……正面切って意見を言っても、彼らには通じない。
貴方だけでもお救いするためには、先のように言って、二人の時間を作るより、仕方がなかったのです。
しかし、さぞ、恐ろしい思いをされたでしょう?姫様。
本当に、本当に申し訳なく……」
「顔を上げて、ラウ」
私の言葉に呼応し、そっと面を上げたラウの目には、涙が浮かんでいた。
「皆様からの恩を、仇で返すことになってしまいました。
でも、信じてください。
貴方だけは、必ず、必ずや生きて、国外に逃がすつもりです。
準備ができるまで、数日の間、こちらでお過ごしください」
「でも、私の亡骸を献上しろと」
「そんなこと、どうにだってなる。
私は、私の人生をかけて、貴方を守ります。それが、私にできる最後の償い……」
最初のコメントを投稿しよう!