§1 御曹司に連れ去られる模様です

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本社のエレベーターって4基もあるのにこんなにも開かない───────。 ぬー。 ポーン。 やっと開いたエレベーターに足を踏み入れる。そこには既に若い男性がいた。 その先客は目を細め、冷めた視線で私を見下ろした。 「ねえ、キミ。このエレベーター、役員専用なんだけど」 「へ?」 年の頃は20代半ば、背は高め、肌触りの良さそうな濃紺のスリーピース。黒髪のマッシュのツーブロック、肌は陶器のように白く滑らかで。 ……モデルみたいだ。 「キミ役員なの?」 「ち、違います!」 役員専用だなんて知らなかった。 ギロリとにらまれて萎縮する。  そそくさと降りようとすると突然、二の腕をつかまれた。 「なにするんで……」 顎をくいとあげ、降りるな、と言わんはかりだ。軽くパニックを起こしているうちに扉は閉じ、エレベーターはゆっくりと加速度をつけた。 「は、離していただけませんか」 「ちょっとつきあって」 「どうして」 「一般社員なのに役員専用エレベーターを使用した罰」 「本社ってそんな罰則あるんですか?」 「知らないの?」
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