2.不毛姉妹~妹が高圧電流を全身に浴びた話

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 姉はアパートを見ている。  その視線を辿って、アタシは玄関前で手を振っている若い男の姿に気付いた。 「乙姫サマ! お勤め、ご苦労様です!」  男はお姉に向かって敬礼した。  何や、それ。うちの姉は一体どこの組長やねん。  お姉は当たり前みたいに鞄をそいつに預け、脱いだ靴をわざと遠くに転がした。 「ハァハァ」言いながら男はよつんばいになって靴を拾いに行く。 「な、何や、この人……」  明かに関わりたくないタイプの人間だと、アタシは本能で気付いていた。 「オホホ」  何が楽しいのか、笑いながら姉がアタシの洗濯ばさみを引きちぎる。 「ギャッ!」  皮膚ごともっていかれそうな激痛に、その場にうずくまった。  その声でようやくアタシの存在に気付いたのだろう。  男が立ち上がる。まだ二十歳代前半──お姉と同年代くらいに見える。  体格はいいくせに、何やら貧相な印象を与える男だ。  そいつはしたり顔でアタシの前に人差し指を突き出した。 「電線でターザンごっこはダメっ!」  だから何なんや、コイツは。  アタシは口元が引きつるのを自覚した。 「なぁ、この人シバいてもいい?」
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